【仰向けで寝ていて、唾液や鼻水でむせたり咳き込んだことありませんか。】
【喉の構造に原因がある方もいます。】
【むせとは】
内視鏡で喉から気管の入り口を覗いたところです(写真1)。
中央の黒いところが気管の入り口です。飲食物が気管に入ることを誤嚥といい、誤嚥しないようにむせがおこる。むせは防御反応だと言われています。
実際の喉の中で何が起こっているのでしょうか。どのようにしてむせが起こっているのでしょうか。その現象が分かればむせない方法が見つかります。
【喉の中はどうなっている】
写真1を模式的にしたのがイラスト2です。
イラスト2のピンクの部分に飲食物が入るとむせがおこります。
被裂間(ひれつかん)から、唾液や鼻水が喉頭に入りむせやすくなる場合がよくあります。
イラスト2の声門の手前に喉頭という器官がある。内側はすり鉢状(ピンク色部分)になり、最下部の声門が飲み込む瞬間閉じて飲食物が入らないようにしています。すり鉢の周りに壁(披裂)や水かき(披裂喉頭蓋襞)のような物があり喉頭内に唾液や鼻水、飲食物が入らないように堤防の役割をしています。呼吸とともに左右の被裂は近づいたり遠のいたりし、被裂間も接したり離れたりします。
【気管の手前の喉はどのようになっているのでしょうか】
喉の形状は複雑で、立体構造をした透明咽頭モデル「トラピス」によれば、真横になると喉の側面に誤嚥できない空間が生じるのがわかる。写真3
鼻水や唾液はどこを通る
座位や仰臥位では、絶えず鼻水は気管に向かっています。
イラスト4,5
就寝時は唾液と鼻水が喉に溜まります。イラスト6
鼻水も唾液も体温と同じ温度で少しずつ喉へ垂れ込むので嚥下反射が出にくく、誤嚥してしまいます。
また、鼻水には塩分が含まれているので喉で溜まっていると炎症に繋がります。
また、喉に炎症が起こると喉の感覚も低下してしまいます。
【仰向けに寝ていると堤防の隙間になる被裂間から喉頭に入りやすくなる。】
仰向けに寝ていると堤防の隙間になる被裂間が真下になり、喉頭に入りやすくなる(イラスト7)。そのために90度側臥位が有効です(イラスト8)。90度側臥位(完全側臥位)から背中を倒していくと60度くらいから急激に入りやすくなるのがわかると思います(イラスト9)。45度側臥位ではほとんど効果はなくなります(イラスト10)。
【唾液や鼻水が多くて、夜間にむせがひどい場合】
横向きに寝ていて、気が付いたら仰向けになり、唾液や鼻水が披裂間から喉頭に入りむせが起こっている場合もあります。90度側臥位では、喉の側面に唾液や鼻水が溜まり気管の方へ流れにくくなります。
背中側に倒れにくくするためのクッションがピタットくん90ワイド(完全側臥位支援クッション)です(http://bit.ly/2XPlS4x)。
ピタットくん90ワイドの中には小さなクッションが入っており背中側に倒れにくくなっています。
シート部分を身体の下に敷き込むと自分の体重でクッションが動きにくくなり、より背中側に倒れにくくなります。
【食事中も披裂間が注意】
実は、仰臥位で食事をしているのは、被裂間が下になった状態です。仰臥位は、飲食物を口から喉に落とし込み、喉の背中側を滑らせて梨状窩に運ぶには有利です。しかし、次のような方にとってはとても危ない姿勢です。場合によっては口から食べることを禁止されます。
・なかなか飲み込めない方(嚥下反射惹起遅延)
・喉に物がよく残る方(咽頭残留)
・喉頭に唾液や物が入りやすい方(喉頭堤防機能障害)
口から食べることを禁止された方の6~7割の方が食べられるのが【完全側臥位法】で代表的な姿勢が【完全側臥位頸部回旋】写真11です。実際の嚥下治療になると多くのバリエーションが必要になります。
【完全側臥位頸部回旋】
90度側臥位(完全側臥位)が最も喉頭に入りにくい姿勢です(イラスト8)。
完全側臥位になると写真3のように喉の側面に誤嚥できない空間が生じます。
食道は普段閉じていて唾液すら入ることはできません。そこで食道の入り口を少しでも広げて入りやすくしようと考えたのが頸部回旋です。
完全側臥位頸部回旋は、
1、喉頭に入りにくい姿勢をして(被裂間からの侵入がしにくいイラスト8)
2、喉の側面に誤嚥できない空間を作る(写真3)
3、食道の入り口を広げ、入りやすくした姿勢(写真11)
つまり、最も安全で食事ができる楽な姿勢です。
この完全側臥位頸部回旋をしっかり支えるのがふたこぶラックンです(写真12)
三角枕と長方形枕の間をタオルでつなぎタオルに頭を乗せると、頭の重みでタオルが2つの枕を引き寄せて頸部回旋した頭をしっかり支えます(http://bit.ly/33Xu04q)。
完全側臥位を取るのが難しい方は、ピタットくん90ワイドで背中に倒れないようにし、ふたこぶラックンで頸部回旋を支え、回復体位クッション(http://bit.ly/2siEq1E)で上肢と下肢を支えれば安楽に食事ができます。ふたこぶラックンを外して唾液誤嚥予防の回復体位へ移行できます。
【誤嚥性肺炎と低栄養を防ぐための姿勢研修】
3つの普遍的原理原則「重力」「普段食道は閉じている」「喉の立体構造」を透明咽頭モデル「トラピス」やイラスト、VE動画を使って、むせと誤嚥の仕組みを理解してもらいます。仕組みがわかれば、誤嚥しない方法もわかります。その姿勢を全員参加し自分たちで講義内容を考えながら体験する。考える誤嚥予防を実践しませんか?
関連投稿
【90分時間を下さい。そうすれば、唾液誤嚥予防と口から食べられる姿勢を施設全体で共有してみせます。 http://bit.ly/2sbGlFg
【風邪は誤嚥性肺炎の元】http://bit.ly/35bUqkH
【唾液や鼻水によるむせや誤嚥を防ぐ回復体位】http://bit.ly/2LqVYz5
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参考文献 嚥下障害に対する 攻めのリハビリテーション---完全側臥位法 http://bit.ly/2Oqxmsk
医療・看護・介護で役立つ嚥下治療エッセンスノート 全日本病院出版会
参考VE動画 嚥下治療講座2018山形読影会DVD http://bit.ly/2YNHGOO
嚥下治療講座 2019 VE合宿in飯田 http://bit.ly/2PKwG0g
参考教材 透明咽頭モデル「トラピス」 http://bit.ly/37GgMvZ
研修 誤嚥性肺炎と低栄養を防ぐための姿勢研修 http://bit.ly/2KUarDC