見ればわかる 仰臥位より安全な完全側臥位
嚥下障害者の誤嚥しにくい食事の工夫として、リクライニング角度を30度や45度に設定し、頸部前屈などをする仰臥位がある。
しかし、喉の構造上より誤嚥しにくい姿勢があることがあまり知られていない。
透明モデルを使うと、飲食物の貯まるところと量が可視化できる。
●仰臥位での考え方
1. 重力を利用した工夫
肺と食道の位置関係を利用し、気管より下にある食道の入口に飲食物を入れる考えである。
2.飲食物を貯める工夫
気管の入口の蓋をする喉頭蓋は普段開いており、蓋を閉じる前に、飲食物が入り込むと誤嚥するので、あごを少し引き気味にすると口からまっすぐに気管に向かって行かず一旦喉頭蓋に当たるようになり飲食物が気管に入りにくくなり、喉頭蓋谷や梨状窩に貯まりやすくなる。
●飲食物がたまる場所
仰臥位では梨状窩と喉頭蓋谷
▼問題点
仰臥位では、食事中にむせたり誤嚥したりして中止することがある。最悪口からの食事を断念する。その原因は飲食物が貯まる場所が気管の入口に近いことと貯まる量が個人差にもよるが約3ccと少ないことである。そのため、一口量のスプーンで食べさすように指導している。しかし、さじ加減によっては、多すぎて嚥下前に誤嚥したり、嚥下後残った飲食物が誤嚥したりするので注意が必要となる。
完全側臥位では咽頭側部空間と梨状窩
▲有利点
・咽頭側部の空間は、気管の入り口より下側に広がり誤嚥しない空間になる。舌を超えたところから梨状窩まで繋がった空間であり、15~20㏄ほど貯められる。これは大さじ1杯分と同じぐらいで、3㏄スプーンでは考えられない量となる。
・一回の嚥下で飲み込める量が多いので、口からの栄養摂取量が多く取れ、食べる訓練ができる。
仰臥位 | 完全側臥位 | |
貯留場所 | 梨状窩、喉頭蓋谷 | 梨状窩、咽頭側部空間 |
貯留量 | 約3㏄ | 15~20㏄ |
誤嚥の危険性 | 絶えず有り |
食事中ない。ただし、食後貯まった 飲食物を誤嚥しても 問題ない水などで流し込む |
食べる量 | 少ない | 多く取れる |
姿勢調整 | 再現性がない | 再現性あり |
疲れやすさ | 姿勢を保つのに疲れる | 姿勢が楽で疲れない |
麻痺の有無 | 健側側を利用 | どちらでも食べられる |
自力摂取 | 食事介助が基本 | 自力摂取を目指す |
胃瘻について | 誤嚥の危険性が増すと胃瘻造設を検討 | 口から栄養が摂れると胃瘻抜去を検討 |
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