いつからか声がかすれるようになった。特に体調も悪くないので、そんなもんだろうと気に留めずにいた。年を重ねてくると、だんだん痰がらみが多くなってきた。咳もうまく出ないようで痰が切れない。さらに時々微熱が出るようになり、体重も減ってきた。食欲もなくなって・・・
肺に食べ物や飲み物、唾液が入らないように押しとどめる機能の代表が声門です。声門がしっかり閉じないと喉に圧力をかけて飲み下そうとするときに声門の隙間から食べ物などが肺に押し込まれてしまいます。声門はまさに声にかかわっていて声門の閉じが悪いと声もかすれてしまいます。声のかすれは誤嚥の危険と隣り合わせなのです。
声門の運動が悪くなる原因は様々あります。前回お話ししたのどの風邪でも起こります。ほかに神経の障害、筋肉の病気、腫瘍、外傷(外からの刺激)などでも生じます。また問題を放置すると悪化する可能性があります。
声のかすれが出てきたら、まず刺激になりそうなものをやめてみましょう。タバコやお酒、辛い食べ物などです。そして水でむせるようでしたらとろみ剤を使ってみましょう。1か月程度対応して改善しないようなら一度耳鼻科やリハビリテーション科で診てもらってください。
すでに進行してしまって、食事をするのが苦痛になっておられる方はもう一歩進んだ対応をすると安心です。それが完全側臥位です。横になって食べることで、声門よりも低い位置を食事が流れるようになり、誤嚥するのに重力に逆らって上る分余計なエネルギーを要するので誤嚥量を減らしたり、なくしたりできるようになります。また声門の動きが悪くなる場合は左右どちらかだけが調子が悪いことも多いので、調子のいい側を下にしたほうがより良い結果に結びつきます。右下、左下を試してみて、より調子が良いほうを下にして食べてみてください。
専門家にかかると、さらにいろいろな方法で安心して食べ続けられるように治療してもらえます。
福村直毅