「小刻み歩行で痩せてきたおばあちゃん」

おばあちゃんは見るたびに小さくなっているように見えます。なんとなく声が小さくしわがれて聞こえました。歩き方がちょこちょこと小刻みになってきました。表情がぼーっとしてきました。大丈夫でしょうか。

とても危ない状態です。肺炎になる前兆です。パーキンソン症状があり、痩せてきているようです。パーキンソン症状はパーキンソン病や多発脳卒中などでみられる特徴です。どちらも嚥下機能が低下することが知られています。さらに体重が減っているようです。やせは嚥下機能をさらに損なわせる要因になります。体重が下がり始めたら、肺炎はすぐそこに迫っています。

パー キンソン病や多発脳卒中の多くの場合、嚥下機能障害の中心は咽頭収縮不全です。とくに中咽頭(舌の奥)に食材が残る症状がみられます。痩せてくると、さらに食材の残りが増え、下咽頭(声門の周辺)にも食材が残るようになります。そうなると食材が容易に声門から肺に零れ落ちるようになります。咽頭の残留が多くなると食事時の違和感やむせが増えて食事を避ける、または少しずつ食べるようになって食事量が低下します。

 

こんな時はまず完全側臥位で食べるようにしてみてください。咽頭に残った食べ物が肺に落ちなくなるため、現状での肺炎を避けられる可能性が高まります。回復にはやせを改善させる必要があります。特にパーキンソン病では必要な栄養量が増える傾向があります。高齢でもたくさん食べてよいのです。魚や肉類を、ひき 肉のように細かくしたりムース状にして召し上がってください。若い世代と同じように食べて行きましょう。高齢になると、たくさん食べてもなかなか体重が増 えませんので気長に治療していきましょう。

                                                                                                                 福村直毅