「専門的治療」

下障害を専門的に治療するとはどういう内容になるのでしょう。嚥下障害治療は実に多くの専門職が参加します。その中で、個々人の嚥下障害の本質を見極めて 治療スケジュールを立案することが専門的治療の柱になります。嚥下障害の本質を知るための方法がいくつかあります。達人になれば一目ですべてを見抜けるよ うになるのでしょう。私たちはまだその域にありません。本質に迫るためのヒントを探すために検査をすることが多いのです。

下障害に特異的な検査として「嚥下造影検査」と「内視鏡下嚥下機能検査」があります。いずれもそれぞれに特徴のある多くの情報を見せてくれます。嚥下造影 検査は、とくに食道の問題を明らかにしてくれます。食道の入り口や出口の詰まりやゆるみ、食道そのものの動き、途中で狭くなったり広くなったり、あるいは へこみ(憩室)があるかを知ることができます。内視鏡下嚥下機能検査はのどの形やのどに食べ物が残る様子を詳しく知らせてくれます。食べ物の通り方、肺に 食べ物が通らないための機能、のどの縮みの悪い場所、ほか唾のふるまい、のどの汚れ具合などを知ることができます。

ういった嚥下そのものの評価に加えて疾患の特徴、栄養状態、免疫力、本人の意志、周囲の取り組み方などを加味して対応方法を考えることになります。医療 サービスの原点は安全であり、安全を度外視した楽しみを目指すのは限定された条件下でしか許されません。完全側臥位法は様々な種類の嚥下機能障害をよく代 償してくれます。その一方で知っている人がいなければ活用しにくいという問題点があります。患者の安全を守るとともにかかわる人たちの安全を守るために的確な専門的検査と食事代償方法の導入が急がれます。

 

私たちの病院(長野県飯田市 健和会病院)では学びたい方々の研修を広く受け入れております。気軽にご相談ください。

                                                                                                                  福村直毅