あなたは食べるときどんな姿勢をしていますか。ほとんどの方は座って食べているのでしょう。ではこれまで横になって(側臥位で)食べたことはありますか。このように講演で聞きますとほとんどの方は食べたことがないとおっしゃいます。はたして皆さんはいかがでしょうか。
今 では椅子の生活が多くなっていますが、中には和室でちゃぶ台に向かって食べているとかこたつに入りながら食べる方もいらっしゃるでしょう。そういった床の 生活の場合、リラックスしてくると簡単に横になることができます。肘を立てて手で頭を支えて横になりながらテレビを見る。そしてお菓子を食べたりジュース を飲んだりする。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。またソファーの生活の方も、ソファーにそのまま転がって、テレビを見ながらポテトチップ スを食べる。そんなカウチポテトと言われるスタイルもあります。風邪をひいてベッドで寝ていて、ちょっと調子が良くなって小腹がすいたから横になって布団 に潜り込んだままでクッキーを食べてみたことはないでしょうか。
横 になって食べるのは次のような場合と考えられます。①リラックスしている。②体調が悪い。気楽に力を抜いて具合が悪くても食べられるとなればとてもいい方 法に見えます。しかしながら日本では「横になって食べると牛になる」などといさめる言葉があり、横になって食べないようにしつけられてきました。だらしな いと思われることもあります。本当にだらしないのでしょうか。
古代ローマ時代、貴族階級の正式な会食であるシンポジオン(シンポジウムの語源でもある)では、参加者はみな横になって食べるしきたりでした。同時代の偉人である、イエス=キ リストは最後の晩餐を弟子たちとともに「横になって」召し上がっていたことがわかっています。当時のことわざで「座って食べる」という言葉があったそうで す。意味は「ちゃんと横になって食べる暇もないくらい忙しい」だそうです。ヨーロッパ、西アジアの文明はもとをたどると横になって食べるのが行儀の良いス タイルだったのです。
安全でリラックスできる食事が横になって食べる方法です。私たちは昔からの由緒正しいこの食事方法を治療に取り入れるべく「完全側臥位法」と名付けて研究しています。次回は完全側臥位法の効果についてお話しします。
福村直毅